D坂の殺人事件

D坂の殺人事件

D坂の殺人事件 江戸川乱歩 それは九月初旬のある蒸し暑い晩のことであった。私は、D坂の大通りの中程にある、白梅軒はくばいけんという、行きつけのカフェで、冷しコーヒーを啜すすっていた。当時私は、学校を出たばかりで、まだこれという職業もなく、下宿屋にゴロゴロして本でも読んでいるか、それに飽ると、当てどもなく散歩に出て、あまり費用のかからぬカフェ廻りをやる位が、毎日の日課だった。 ▶続きはこちら

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台川

台川

台川 宮沢賢治   〔もうでかけましょう。〕たしかに光がうごいてみんな立ちあがる。腰こしをおろしたみじかい草。かげろうか何かゆれている。かげろうじゃない。網膜もうまくが感かんじただけのその光だ。 〔さあでかけましょう。行きたい人だけ。〕まだ来ないものは仕方しかたない。さっきからもう二十分も待まったんだ。もっともこのみちばたの青いいろの寄宿舎きしゅくしゃはゆっくりして爽さわやかでよかったが。 これからまたここへ一遍いっぺん帰って十一時には向むこうの宿やどへつかなければいけないんだ。「何処どごさ行ぐのす。」そうだ、釜淵かまぶちまで行くというのを知らないものもあるんだな。〔釜淵まで、一寸ちょっと三十分ばかり。〕 ▶ 続きはこちら

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