六日間

六日間
(日記)
與謝野晶子
三月七日
机の前に坐ると藍色の机掛の上に一面に髪の毛の這つて居るのが日影でまざまざと見えた。私はあさましくなつて、何時の間にか私の髪がこんなに抜け零れて、さうして払つてもどうしても動かずに、魂のあるやうにかうして居るのかとじつと見て居た。さうすると落ち毛が皆一寸五分位の長さばかりであるのに気がついた。また昨日の朝八峰の人形の毛が抜けたと云つて此処へ来て泣いて居たのを思ひ出した。頭が重い日である。
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三月七日
机の前に坐ると藍色の机掛の上に一面に髪の毛の這つて居るのが日影でまざまざと見えた。私はあさましくなつて、何時の間にか私の髪がこんなに抜け零れて、さうして払つてもどうしても動かずに、魂のあるやうにかうして居るのかとじつと見て居た。さうすると落ち毛が皆一寸五分位の長さばかりであるのに気がついた。また昨日の朝八峰の人形の毛が抜けたと云つて此処へ来て泣いて居たのを思ひ出した。頭が重い日である。